先日、下記のようなお問い合わせを頂きました。
「はじめまして。母が2年前にガンの治療で抗がん剤を投与され、髪がすっかり抜けてしまいました。その後、治療を終え、ある程度は生えてきましたが、元のようには回復せず、外出もあまりしたがらなくなってしまいました。どうにかまた健康な髪に戻してあげたいのですが、抗がん剤による髪質変化も通常のAGA治療に行っていいのでしょうか?」
結果、ぼくは代表的なAGA治療院2院に問い合わせましたが、いずれも「抗がん剤による脱毛には対応していない」とのことでした。
問い合わせる前から、おそらくAGAとは別問題だろうなとは思ってましたが、やはりそうでした。
では、抗がん剤による脱毛を回復させるにはどうしたらいいのでしょうか?
結論、「”αリポ酸誘導体”に期待」です。
本記事の内容
・抗がん剤による脱毛を抑制|αリポ酸誘導体
・αリポ酸誘導体の特徴|抗がん剤脱毛の回復へ
・抗がん剤による脱毛の回復|まとめ
この記事を書いている筆者は、10代でAGA(男性型脱毛症)を発症して、様々な薄毛治療に失敗し200万円以上を消費しましたが、AGA治療に出会い、現在は薄毛治療に成功。
テーマは「無駄な育毛法には手を出さない」として主に育毛・発毛に関して意義のある正しい情報を発信しています。
この記事では、抗がん剤で脱毛した際の回復に好影響を与えるとされる「αリポ酸誘導体」について書いています。さっそく見ていきましょう。
Contents
抗がん剤による脱毛を抑制|αリポ酸誘導体
「命に別状はない」という理由で、長い間放置されてきた抗がん剤による脱毛。
それを回復させ、これまでの状況を覆す可能性が出てきました。
抗がん剤脱毛を抑制する世界初の成分が「αリポ酸誘導体」です。
実用化はまだなので、今回は「αリポ酸誘導体」の効果や可能性について書いていきます。
抗がん剤脱毛からの回復?|αリポ酸誘導体とは?
CIA研究会(多くの大学やがんセンターの医師が参加)にて、がんや炎症と抗酸化に焦点をあてた研究が行われた。その中の1つが、αリポ酸誘導体による抗がん剤脱毛の抑制でした。
抗がん剤による脱毛のメカニズム
抗がん剤が血液を回って皮膚に達したとき、毛根に強い炎症を起こして毛母細胞を破壊していたことが分かりました。
また、細胞が役割を終えて脱落死することをアポトーシスというのですが、抗がん剤の影響を受けた毛母細胞はアポトーシスにより寿命が通常よりも短くなり、早く死ぬこともわかってきました。
さらに、抗がん剤によって毛母細胞と周辺組織の酸化が進み、炎症を悪化させてアポトーシスを促進させるという悪循環まで起きていることも解明。
この3つを食い止めれば脱毛を抑制できるのでは?と考えたわけです。
少し難しいのでまとめると、
抗がん剤の影響まとめ
①毛根に炎症を起こし、毛母細胞を破壊
②毛母細胞の寿命が通常より短くなる
③毛母細胞と周辺組織の酸化を促進、炎症を悪化
以上が、抗がん剤による脱毛のメカニズム。
まさにトリプルパンチで、髪の毛の細胞を破壊してくるわけです。確かにこれで脱毛した髪を回復するのはなかなか難しそうですよね。
αリポ酸誘導体|抗がん剤脱毛に効くといわれている理由
抗がん剤と同じく、毛根の炎症によって起こる脱毛症として知られているのが、円形脱毛症です。
その治療薬に、セファランチという抗酸化作用を含む薬があります。
抗酸化作用は炎症を抑える効果が高い
なので炎症を起こす円形脱毛症にもよく効きます。
そこで研究チームは、同じく炎症によって起こる抗がん剤脱毛にも抗酸化作用が効くのではないかと推測。
さらに、セファランチよりも高い抗酸化作用をもつαリポ酸に着目。
さらにさらに、αリポ酸を原資に、より抗酸化を強めたαリポ酸誘導体に着手。
副作用の心配はないのか?
結論:それほど考慮する必要はなし
αリポ酸は、人の体を構成している細胞の中にある物質です。抗酸化も日常的に起きるものなので副作用はそれほど気にしなくて大丈夫。
軽視されていた抗がん剤脱毛の副作用
薬の副作用には国際基準がある
抗がん剤脱毛:5段階評価中2
「たとえ全ての髪の毛が抜け落ちても命には関わらない」という観点から非常に軽い位置付けとなっています。
でも患者さんに行った調査結果では、苦痛を感じている順に
①頭髪の脱毛
②乳房の切除
③吐き気
④しびれ
という結果もあるくらいです。
もはや命が助かればいいという発想で副作用を軽視する時代ではありません。
できるだけ抗がん剤による脱毛を抑えて髪を回復させるには、αリポ酸誘導体への期待が否が応でも高まります。
αリポ酸誘導体の特徴|抗がん剤脱毛の回復へ
まず、先に述べた「抗がん剤の影響まとめ」が下記です。
①毛根に炎症を起こし、毛母細胞を破壊
②毛母細胞の寿命が通常より短くなる
③毛母細胞と周辺組織の酸化を促進、炎症を悪化
これらを食い止める物質が、抗酸化作用のある「αリポ酸」です。
ここまでは前途しました。さらに、
αリポ酸のアミノ酸をヒスチジンに置き換え、亜鉛を結合させてさらに抗酸化作用を高めたαリポ酸誘導体を開発。
(αリポ酸のアミノ酸 → ヒスチジン) + 亜鉛 = αリポ酸誘導体
リポ酸誘導体の効果↓ α
・脱毛を防ぐ
・アポトーシスを抑制して細胞を長持ちさせる
ラットを使った実験での回復効果
抗がん剤を投与して脱毛したモデルのラットに対して
①αリポ酸誘導体を塗布
②0%(ワセリンのみ)、0,5%、1%、5%、10%と濃度を変えて試した
結果、濃度1%のαリポ酸誘導体がもっとも多く毛が生えてくることが分かりました。
・薬用成分は、必ずしも濃ければ効くというわけではない
・効果のあったラットは、実際に炎症も抑制されていた
臨床試験での回復効果
CIA研究会のネットワークを利用し、乳がん患者103人にαリポ酸誘導体が入ったローションを使用。約1年半かけて様子を見た。
結果、乳がんに使う抗がん剤の場合
一般的には
・投与開始から2ヶ月で毛が抜け始める
・4ヶ月でほぼ100%脱毛
(通常、約半年で薬の投与が終わり、その後髪の毛は)
・3ヶ月で30%生える
・6ヶ月で70%程度まで回復
αリポ酸誘導体を使用すると
・抗がん剤終了後わずか3ヶ月で90%の毛が生えた
疑問|AGA(男性型脱毛症)には効くのか?
AGAはホルモンの影響。抗がん剤脱毛とはメカニズムが違う。まずは、脱毛を促進する男性ホルモンをブロックする必要がある。
ただし、その上で、AGAでも頭皮の炎症を伴うことがしばしばあるので、炎症を抑えることで効果を期待したい。
抗がん剤による脱毛の回復|まとめ
抗がん剤による脱毛を「完全に回復させる治療」というのは残念ながら現段階ではないようです。
ただし、実用手前まで研究が進んでいることも確か。
毛髪再生医療とあわせて早めの実用化を期待します。